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短編小説3 「レイジ~怖がり屋のウォールブレイカー~」

僕は、ウォールブレイカー。
戦士たちが戦いやすいように壁を壊すのが、たった一つのお仕事さ。
そして、壁を壊した瞬間、僕はこの世からいなくなる。

皆、平気だろって言う。
だって、骸骨だから。
痛くもかゆくもないだろ?肉がついてないんだから。

死んでみないと痛いか、かゆいか、わかんないけれど、他のウォールブレイカーたちは喜んで、壁にぶつかっていく。
ドカン、と小気味よい音を立てて、壁に穴をあけては、戦士たちの道を作る。

でも、僕は。
僕は、怖い。

痛そうなのも、壁が壊れてから自分がいなくなるのも怖い。

だから、いつもキャンプでは息をひそめてる。

大体僕らは多めに連れていかれて、二人くらい余ることが多いんだ。
僕と、そして友達のウォールブレイカー。
この二人で残ることが多い。

友達も、僕と少し似ていて、壁にぶつかることを好んではいない。
きっと、明日もあさっても、僕ら二人は、キャンプに帰ってくるだろう。

そう思っていたのに。

ある日、チーフか紫色の呪文の瓶を投げた。
その呪文に向かうように、友達を放ったんだ。

最初はいつもみたいに、よろよろと歩いていた彼だったけれど、紫の池に足を踏み入れた途端。

「うぉぉぉぉ!!!!」

聞いたこともないような雄たけびをあげて、壁に突進した。
そして、誰も開けたことないような大穴を、一人で開けたんだ。

「そんなやつじゃ、なかっただろ・・・」

僕はつぶやいた。

おかしい。おかしいんだ。あいつ、あんな声出す奴じゃ、なかったんだ。
いつも僕と一緒に、ひそひそ話をして、カタカタと骨を鳴らして、こっそりと笑いあう。

そんな奴だったのに・・・

友達が一人で大穴を開けてくれたので、いつもよりも多めに僕らは帰ってこれた。

でも、僕は。
なんだか、怖くて。

キャンプでしょんぼりしていたら、ジャイアントの優しい声が聞こえた。

「どうした、坊主」
「ジャイアントさん・・・」

巨人のように大きな体だけど、ジャイアントはみんな、優しくしてくれる。
僕は思い切って聞いてみた。

「あの、紫色の呪文の瓶、なんなんですか・・・」
「ん?あー、あれは怒りの魔法だな」
「怒り??」
「ああ。あの魔法の泉に入ってしまえば、怖いのも痛いのも何もかも忘れて、目の前の敵をどんどんやっつけていくことができるんだってよ。
しかも、いつもの自分の倍以上のパワーが出る。最高じゃないか」

それって。

思わず、出そうになった言葉を飲み込む。
なんて言っていいかわからないけど、何か、おかしいんじゃないか?

ジャイアントは、続ける。

「お、ヒーラーが兵舎から出てきたな。今夜は俺とヒーラーが主役かな?」
「そう、なんですか??」
「ああ!多分怒りの魔法を存分にかけてもらって、思い切り戦えるぞ!」

嬉し気に、ジャイアントは去っていった。

あの魔法にかかったら、僕は僕でなくなるのかな。

怖いと思っている、この僕は、どこへいってしまうのかな。


きっと僕は戦場に向いてない。

早く、戦いが終わればいいのに。
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